「人権ストーリー・コンテスト2008」入賞作品の決定について


「人権の世紀」といわれる21世紀にふさわしい人権尊重社会の実現を目指して、すべての人びとが人権の意義や重要性に関する知識を身に付け、なおかつ人権問題を直感的にとらえる感性や、日常生活において人に対する人権的配慮が自然に現れるような感覚をはぐくむことが可能となるよう、一層の創意工夫を凝らした啓発活動が必要です。

財団法人人権教育啓発推進センター(以下、人権センター)では、人権啓発映画・ビデオ等の映像、啓発冊子などの素材として新しい視点から描かれた、「身近なことから考える人権」をテーマにしたストーリーを募集する「人権ストーリー・コンテスト2008」を実施しました。

今回で9回目となる本コンテストにおいて、厳正な審査の結果、以下のとおり入賞作品が決定しました。

1.入賞作品


(1)一般部門


①最優秀賞 / 副賞(賞金20万円)(1作品)
・作品名:「逃げない」
・作者:有賀(あるが) 佐知子
・所在地:神奈川県横浜市


②優秀賞/副賞(賞金5万円)(1作品)
・作品名:「それがどうしたん?」
・作者:嶋 鉄平
・所在地:兵庫県宝塚市


③全国地方新聞社連合会賞/副賞(賞金5万円)(1作品)
・作品名:「残ったもの」
・作者:山田 明美
・所在地:奈良県北葛城郡


(2)ジュニア部門


①人権センター賞/副賞(図書券等3万円分)(1作品)
・作品名:「桜貝」
・作者:小林 まゆみ
・所在地:愛知県岡崎市

②全国地方新聞社連合会賞/副賞(図書券等3万円分)(1作品)
・作品名:「アイスクリーム!」
・作者:薛(せつ) 沙耶伽(さやか)
・所在地:福岡県福岡市


2.結果概要


(1)公募方法


①人権教育啓発情報誌「アイユ」(人権センター発行)に掲載
②人権センターホームページ(http://www.jinken.or.jp/)に掲載
③全国地方新聞社連合会加盟各紙に掲載
④公募雑誌・ホームページに掲載
⑤都道府県・政令市の教育委員会へ案内文書を送付
⑥人権啓発フェスティバル来場者へ案内文書を配付
⑦東京、神奈川、千葉、埼玉の公立中学校(1,865校)に案内文書を送付


(2)公募期間


2008(平成19)年6月上旬~11月14日(金)


(3)応募作品の概要等


作品で取り上げているテーマの内訳は、次のとおり(複数回答可)。

①人権全般…………………………………………………………… 9作品
②女性(男女共同参画)…………………………………………… 6作品
③子ども(いじめを含む)…………………………………………37作品
④外国人………………………………………………………………10作品
⑤同和問題……………………………………………………………12作品
⑥障害者………………………………………………………………22作品
⑦HIV・ハンセン病等…………………………………………… 1作品
⑧インターネット…………………………………………………… 0作品
⑨ホームレス………………………………………………………… 3作品
⑩性同一性障害・性的指向………………………………………… 2作品
⑪その他………………………………………………………………47作品


(4)応募総数 (144 作品)


一般部門:106作品 / ジュニア部門:38作品
男性: 56作品 / 女性:87作品 / 不明:1作品


(5)応募者年代 (144作品)


①10代未満… 2人
 ②10代………37人
 ③20代……… 6人
 ④30代………17人
 ⑤40代………26人
 ⑥50代………21人
 ⑦60代………12人
 ⑧70代……… 5人
 ⑨80代……… 1人
 ⑩不明…………17人
 ※最年少……7歳 最高齢……88歳 平均年齢……45歳


3.入賞作品のあらすじ及び講評


◇入賞作品の全文をPDFでごらんいただけます。 受賞作品・全文(PDF)


■一般部門 最優秀賞
「逃げない」 有賀 佐知子(あるが・さちこ)

<あらすじ>
咲子(さきこ)は、知的発達に遅れのある次男の健(たける)を育てている。忙しくて力になってくれない夫、長男の晃(あきら)ばかりかわいがる実家の母を前に孤独感にあえいでいる。ある日、道で騒ぎ周囲から非難の視線を浴びる。「辛い現実から逃げ出したい」死の誘惑との闘いだ。そんな中で地域の療育機関であるセンターに通うようになり、同じ悩みを持つ母親たちと出会い支えあうことの大切さを知った。健を「恥」と言い親戚に内緒にしている母、親しい友人にも息子のことを黙っていた夫。咲子は、そんな二人の頭越しにママ友だちに理解を求め動き始めた。十六年たった今、二人の息子はそれなりに無事に成長した。まだ越えるべき壁はたくさんあるけれど、咲子はこれからも現実に向き合って生きていこうと思っている。

<講評>
自閉症の子どもを育てる母親の気持ちの変化がよく描けている。特に冒頭の部分を他人の視点で描いたところがいい。自閉症の子どもを「開かれ、支えあう社会」のなかで育てようという、誰にも受け入れられる普遍的な主題を示すストーリーである。読んでいて励まされる作品。ストーリー構成、言葉のやりとり、心象表現、いずれも完成度が高い。


■一般部門 優秀賞
「それがどうしたん?」 嶋 鉄平(しま・てっぺい)

<あらすじ>
真美が、担任に「今日、弟と共に先生の家に泊まったことにしてくれ」と頼みにくる。父親に、母親とは絶対に会うなと言われている真美が弟の為に頼んできたのだった。仕方なく真美の言葉に従う担任だったが、その夜、父親が訪ねてくる。うろたえる担任に父親は、「母親と一緒なのはわかっている」と言い二人飲みにいくことになる。その中で母親が部落の出であることがきっかけで別れ、父親は悩み、傷つき後悔していることを話す。担任も義弟が部落の出であることを語り、自分も差別者じゃないかと悩んでいることを話す。母親の幼なじみである店のおかみの言葉に励まされ父親は母親を迎えにいくことになる。
担任は、後日、人権の授業を取り組む。その中で生徒が「俺は部落の出である」と言う。その言葉で静まりかえる教室。「『それがどうしたん?』ってなんで言えへんのん」と真美は叫ぶ。この叫びから学級が人権問題について考え、まとまりを見せ始める。

<講評>
「それがどうしたん?」というタイトルの快い響きが心に残る。ストーリーに一貫性があり、心の揺れもよく描写している。同和問題のテーマを明るくとらえようという気概にあふれている。素材の使い方も会話の流れもよく、文章力もありさわやかさを感じる。構成もストーリー展開もしっかりしている。


■一般部門 全国地方新聞社連合会賞
「残ったもの」 山田 明美(やまだ・あけみ)

<あらすじ>
義肢装具士として小さな作業所で働く古沢進は勤続二十年のベテラン技師。がむしゃらに働く進の影には、兄との苦い思い出があった。
ある日、進は事故により右下腿骨を切断した青年、宮脇修の義足をつくることになる。若くして足を失った現実をなかなか受け入れられない修と、過去を乗り越えられない進。義足を通じて触れ合う二人は、ゆっくりと、お互いの障害を乗り越えていく。

<講評>
あまり知られていない義肢装具士の世界という設定が魅力的である。読ませるストーリー展開となっている。足を失ったという現実を受け入れない青年と過去を乗り越えられない主人公が、「失ったものではなく、残ったもの(失うことで得たもの)」を大切に生きていこうとする。分かりやすく構成がしっかりした秀作。


■ジュニア部門 人権センター賞
「桜貝」 小林 まゆみ(こばやし・まゆみ)

<あらすじ>
中学二年生の緒方忍は夏休みに、港町に引っ越してきた。ある日、家から離れた海岸に出かけ、綺麗な薄桃色の貝殻を見つける。そのとき、偶然その辺りに住む、本庄早弥という中二の女の子に会った。その貝が桜貝という名だと教えてもらい、二人はその海岸で頻繁に会うようになる。
中学校が違うことで、素の自分でいられた忍であったが、ある日、二人とも同じ中学校であることが判明する。自分が女だと知られ、白い目で見られることを恐れた忍は部屋に引きこもるようになる。
学校が始まった後、部屋の窓の下に、大量の桜貝を持った早弥がやって来た。忍が性同一性障害であることを知ったが、友達にもなれないか、と頼み込んでくる。自分に正直になれと言われ、早弥と、いつも自分を心配している母を信じて生きていこうと思った。

<講評>
性同一性障害という今日的テーマに前向きに取り組み、しかも感性に訴えるタッチでさわやかに描いている。ストーリーの転換も中学生の作品とは思えないくらい見事である。桜貝という小道具の使い方もうまく好感がもてる。


■ジュニア部門 全国地方新聞社連合会賞
「アイスクリーム!」 薛 沙耶伽 (せつ・さやか)

<あらすじ>
水野栞は不登校の高校生。彼女の存在はクラスにはない。不登校という、学校に行けない理由を「甘え」だとみなされ、だれにもわかってもらえない。本当はそんなんじゃないのに。憧れは同級生の南さん。南さんにショッピングにさそわれたことから、栞の世界観が少しずつ変わってくる……。

<講評>
不登校の少女と派手で活発な少女との交流の中に、現在の高校生たちがおかれている状況がよく描かれている。不登校をめぐる当事者と非当事者との心理的距離は意外に近く、いいかえれば分かりあえる可能性を暗示したストーリーである。


4.その他


募集要項もご覧ください。 ストーリー・コンテスト募集要項(PDF)


5.問い合わせ先


財団法人 人権教育啓発推進センター「人権ストーリー・コンテスト2008」事務局
〒105-0012 東京都港区芝大門二丁目10番12号 KDX芝大門ビル4階
TEL 03-5777-1917(直通)/ FAX 03-5777-1803
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